第四回目はモチベーションの持ち方や、
トレーニング方法・課題の取り組み方などをお聞きしました。

Interview 04「モチベーションの根源」

公開日:2020年5月18日

モチベーションの根源はトップクライマーのムービー

── 二人が目標を設定するときの基準とか、方法などがあれば教えてください。

村井 DVDとかYouTubeとか、トップクライマーのSNSを見て、それは強烈な印象を受けるんで、やっぱり「この課題やりたい」というモチベーションになります。それで自分が、リーチとか物理的にできそうな課題であれば、それをとりあえず当面の目標にしようってなります。憧れから目標にもっていった方がモチベーションにも繋がるし、いいと思います。

── 野村君はどうですか?

野村 僕も同じですね。SNSで見て「うわ、カッコいいな」って思って、ただ僕の場合は、それに向けてやっぱり特殊能力を身につけていかないと、たぶん対応できないんで。憧れの課題から、じゃあ実際に登るためには「まずどうしたらいいか」っていうのを考えて、その必要な要素をまず身につけた後に、その課題と向き合えるといいですね。
でも、スイスツアーは直近で決まっちゃって、その準備ができなかった部分があるんですけど、まあ、それが初めてのツアーだったんで、今後はそういう風にやっていこうかなって感じですね。最近はmellow(クライミングメディア)とかもできて、結構あれはありがたい。よく観てるな。

村井 世界中のヤバい課題がピックアップされてるもんね。

野村 「Sleepwalker(V16/Redrocks)」とか、ホント観賞用ですね。カッコいいなとは思うけど、まあ俺は(リーチ的に)来世だな、みたいな。

村井 吟味ができますね。欧米人が普通に登ってる課題も「まっ、できるでしょ」と思って、実際にやってみると、全然、届かなかったっていうのも結構あります。あんまり参考にならないときもあるんですけど、できてもできなくてもカッコいいラインだったら一度は触っておきたいなって思いはあるので。

── mellowの中心メンバーで一番小柄なのってダニエル・ウッズ?

野村 ショーン・ラブトゥのほうが、ちっちゃいかな。

── ダニエルがちょうど170㎝かな、身長が。

野村 ダニエルはリーチが長い。

── リーチが180cmって昔、某イベントのトークショウで話してました。

村井 180㎝なんですね。もっと長いのかと思ってました。

── 国内の場合、特に村井君は、だんだん近場で登るものがなくなるっていう現象が発生しませんか?

村井 既存の課題だと、やっぱりそうなってくるんで、新しくラインを探すか、西に引っ越しするしかないですね。最近、ちょっと意識が変わってきてて、やっぱり再登するよりも新しい岩を見つけるところから始めて、で、ラインを引ければいいなって。この間、ちょっと瑞牆を歩いてみたんですけど、色々ありましたね。

強くなるためのトレーニング

── 新しい岩を見つけてラインを引く、っていいですね。では、続いてトレーニングについての話を聞きたいと思います。普段どういった内容のトレーニングをしていますか?

村井 普段のトレーニングは基本的には登りこみと、ビーストメーカーをやるくらいです。強傾斜での登りこみが多いですね。

── 1回のトレーニングで、どれくらいの時間登りますか?

村井 4時間ぐらいです。週に3日、4日ですかね。ツアーの2週間ってあんま長くないので、その短い期間でしっかり成果出すために、一日で登れる量を少し増やしておいて、あんまりトレーニング中にレストを入れないように意識してます。
あとは、ツアー中に登りたい課題に対して、それに模した課題を作ってツアー前に練習します。「Off The Wagon」をAPEX(村井が勤務するクライミングジム)に作ってやってたんですけど、もう悪すぎて全然できなかった(笑)。

── 作ったシミュレーション課題のほうが難しかった?

村井 そうですね。かなり(一手が)遠いんだろうなと思って。でも実際本物をトライしたらそれよりも全然距離が近くて。それで、日本に帰ってきてもう1回シミュレーション課題やってみたんですけど、やっぱ全然できなかった(笑)。ただ、動きはすごく似てたんで、次回「Off The Wagon Sit(V16)」に行くときは、それをもう1回やっとこうかなと思ってます。

── 野村君のトレーニングはどうですか?

野村 僕は、結構、苦手が多い。苦手っていうか、やらなきゃ!って思う項目が多いです。今だったら3本指(オープンハンド)のトレーニングとか。
シミュレーション課題は僕も作るんですけど、痛いホールドを付けてますよ。岩って痛いときが多いんで、パッと離さないように、痛いのに耐えられるようにしたいなって。

── あえて、人工壁でも痛いホールドを?

野村 人工壁って、どうしても気持ちいいホールドを選んじゃうと思うんです。
今は鳳来の「白道」をやってるんで、今度は1本指の練習をしようかなみたいな。そういう感じで日々やってます。それが克服できたときは、一番うれしくて。なんだろう……クライミング能力を底上げできるんで。今後、何かにぶち当たったときに応用できるし。そんな感じでやってます。
ただ、ツアーに向けたシミュレーションというか、(りゅうさんの)トレーニング中にレストを入れないっていうのは今までしてなかったんで、参考にしたいかなって。

── フィジカルトレーニングはしますか? 筋トレ的な。

村井 筋トレはあんまりしないですね。腹筋ローラーをちょっとやるくらいです。あと、基本は懸垂、ぶら下がり。

野村 僕は十字懸垂をやってます。リーチが短いんで、ピンピン状態から動けるか動けないかってとても大事なんで。あとはフィンガーボードぐらいですね、トレーニングは。

── 故障やケガはありませんか?

村井 ほぼ、ないですね。パキった(手指の腱靭を傷める)こともないです。

── 故障しないように気をつけていることはありますか?

村井 全く気をつけてないです(笑)。無理のないムーブで登るようにはしてますけど、意識はしてないですね。やっぱり。

野村 一本指くらいかな。一本指はヤバいって思うから。

村井 たしかに。「白道」のときは飛ぶ前に、これイケるか?この持ち方でイケるか?ってなって、ヤバいときは降りました。

野村 ヤバいときは、ヤバい!って信号がくる。これ無理でしょって。

村井 これは本能的にわかります。この向きで、この掛かりで飛んだらパキるって。

── まったく気をつけてないっていうのは良い話でしたね(笑)

村井 でも、年齢とかも関係あるのかもしれないです。そろそろ気をつけないと。着地もだんだん怖くなってきた、最近。

高難度課題を登るために

── 続いて、二人が高難度課題にトライするにあたって意識していることってありますか?

村井 高難度課題を登るとき、1トライして落ちたときに「なんで、そこで落ちたのか」っていうのをしっかり考えるのが大事だなと、自分のなかで思ってます。1回落ちたら、どうすればそこを突破できるのかを10個くらい考えるんで、1回のトライでたくさんの情報を得て、とにかく片っ端からそれを試すっていうのは意識してやってますね。

── 頭を使うってことですね。

村井 そうですね。それが「つなげ」の早さに関係してるのかもしれないです。パートパートでバラすときもつなげることを前提に、つなげに適したバラし方があるんで。それを見つけておくとつなげやすくなります。それは塩原に通ってたときから意識してますね。

── 野村君はどうですか?

野村 僕はたまにパフォーマンスも意識しちゃってて……。例えば、「ハイドランジア」とか1回キャンパシングでやったんですけど、やっぱカッコいいって思うムーブだったらそれでやりたいって思っちゃうときもあって……やっぱ登りきることが一番だと思ってるんですけど。

村井 わかる、それ!その課題といったら、こういうムーブが印象的みたいな。「Off The Wagon」だったらキャンパ!みたいな。

野村 もちろん登ることが大前提で、登ることが一番大事。

村井 内容の追求はその次になっちゃうから、とりあえず、登りたいっていうのはありますよね。

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