第三回目は愛用のシューズとお気に入りの理由、
クライミングシューズに求める性能などをお聞きしました。

Interview 03「愛用のシューズとその理由」

公開日:2020年5月11日

── 先ほどヒールが得意ですとか、トウフックが得意ですって話も出ていました。次はシューズについて聞かせてもらえればと思います。まず、お互いの愛用しているシューズと気に入ってるポイントを教えてください。

村井 僕が愛用しているのは、『レグルス』と『アップライズVCS』。この2足をメインに使っていますね。一番の武器であるヒールフックを最大限に使えるシューズなので。レグルスがオールラウンドに使えるので、岩場はこれメインですけど、さらに高度なヒールフックが求められるときは、やっぱり形状的にフラットタイプでよりヒールフック性能が高い『アップライズVCS』を使うようにしていますね。このモデルは基本的にヒール課題のときしか使わないです。

── 使い分けをしているということですね。

村井 ヒールフックの強度によって使い分けていて、オールラウンドに使っているのは『レグルス』です。基本的にこれを履いとけば何でもできるので、不便なところとかはないですね。フィット感もすごくあって、以前まで使用していた他ブランドのシューズより力が伝わりやすい構造になっているのは、すごく助かっています。かき込みもできるし。

── どちらかといえば硬めが好きですか?

村井 硬めのほうが自分は好きですね。やっぱり岩だとエッジングが多いので、どうしても柔らかいと負けちゃうのが、ちょっと……。自分は、そんなにつま先とか強くないんで、硬いシューズに助けられてという感じですね。

── 村井君がよく使っているヒールフックの掛け方、独特のヒールフックをしていると思うのですが。

村井 『レグルス』はヒールカップ形状が独特ですよね。最近は『レグルス』履いている人も見掛けるんですけど、やっぱりこのヒール形状に慣れてないというか、このシューズでのヒールの掛け方がわからない人もいるみたいですけど、自分としては馴染みのある形です。

── ソールラバーのヒールの巻き上げた端っこのところを引っ掛ける感じ?

村井 そうですね、これが一番!このラバーエンドが途中で終わっているのが、すごいミソっていうか。ソールラバーとランドラバーの間をピンポイントで潰すことで、とても強力に引っ掛かりますね。特に、面よりもエッジのヒールフックに強い感じです。

── 村井君は手指に隠れているようなホールドに、指を1本2本ずらしてヒールを掛けている姿が印象に残っています。岩でもコンペでも「絶対そこでヒールは掛けられないでしょ」ってところに掛けていることがあって、それはやっぱり、その形状のヒールじゃないとうまくできませんか?

村井 ん~、おそらく。自分はこのヒール形状が一番安定するんじゃないかなって思っています。他のシューズと比べても。

── そういう話を以前から村井君に聞いていたので、『レグルス』と『アップライズ』シリーズは同じ形状のヒール構造にしているというのはあります。たぶん以前まで使用していた他ブランドのフラットタイプシューズを履いていた時期に身につけたテクニックだと思うのですが、昔からですか?そのヒールの掛け方っていうのは?

村井 最初からその他ブランドシューズを履いていたわけではないですけど、それを履きはじめて、今のヒールの掛け方に気がついたみたいです。それで、このヒールフックの安定感が気に入って、ひたすらそのシューズ履いてきたって感じですね。

── 当時、あの人はなんでダウントウシューズを履いてないんだろうと……。

村井 コンペで(フラットタイプ)使っている人は、ほとんどいなかったですもんね(笑)。

── 村井君のヒールフックにみんなが気づきはじめて、次第に真似する人が増えましたね。

村井 そうですね。このヒール形状の良さに気づいてくれる人が増えるといいですね。ヒールを掛ける向きとか力を入れる方向にコツがあるんだと思います。慣れるとすごく武器になりますね。

── 次は野村君、いろいろと聞かせてください。

野村 インドアはだいたい『ヴィム』を使っています。めちゃくちゃトウフックが掛けやすくて、スリッパなのに脱げる感じがしないのがいいです。岩も河原とか行ったら『ヴィム』が多いですね。なんかこう……面系踏むときもあるんで、そういうときはこのモデルに履き替えてます。でも、岩はだいたいエッジングがいい『レグルスLV』。『レグルス』だとちょっと硬すぎてしまうので、LVを履いています。僕もこのヒール形状が好きで、エッジにヒールするときは内ももの上側に力を入れて決める感じ。

── 『ヴィム』は高難度が登れるスリップオンっていうイメージで企画開発したので、野村君が履いてくれて、すごくうれしいです。

野村 軽いし、ピンチフックとかめっちゃ掛かります。プロジェクト(クライミングジム)はピンチフックの課題が結構多くて、だいたい悪いホールドを持って手に足(手で保持しているホールドに足を掛けるムーブ)でホールドにピンチフックみたいな。そんなときは
『ヴィム』。他に『ベガ』とか『レオパード』とかも履いているんですけど、メインはこの2つ。

── 男子は使い分けをする人が多いですね。

村井 他だと『シリウス』の足残しは本当に感動した。どんだけ足残んの!って……。しかも履き心地がめちゃくちゃいい。

野村 たしかに。

フィット感の良さ、ヒールカップとつま先の関係

── 『シリウス』シリーズはレースアップなので特にフィット感がいいのと、『ヴィム』のヒール形状と同じで踵の上までソールの巻き上げをしているので、踵から前方向に足を押し出してくれる。それもあってつま先を残しやすい。ヒール形状とつま先って、実は密接に関係しているんです。

村井 足もすごく残せるし、フィット感がよくて、履いていてすごい気持ちいい。

── アンパラレルシューズ全モデル共通ですが、スリングショットに工夫があります。企業秘密なので詳しくは言えないけど、ファクトリーで打ち合わせして、土踏まずのフィット感が出るように作っています。ヒールカップも剛性を出して踵全体がしっかり収まるような構造にしています。アンパラレルはどのモデルを履いてもヒールカップの収まりがいいと思うのですが、『シリウス』なんかは特にそれが顕著です。結果的につま先に力が集まるので、足が残せる。それをもっと簡易版にしたのが『ヴィム』みたいな感じです。

野村 たしかに『シリウス』は、最初に履いたときビックリした。本当につま先しか使わない課題だったらむちゃくちゃいい。強傾斜でずっと足を残してないといけないみたいな課題とかだったら、すごく相性がいいかもしれない。足切れたらおしまいみたいな。
「モナ・リザ」とかいいのかな。ちょっとやってみようかな、『シリウス』で。

村井 確実に足を残さないと。

野村 あれ、(足を)切ったら終わるもんな。

村井 切ったら終わりだもんね。

野村 あれヤバい。

既存課題のグレーディング考証

── 「モナ・リザ」のホールド、むちゃくちゃ悪いですか?

野村 いや、悪いです。

村井 悪いですね。

野村 過去イチ悪い。ピンチがヤバい。

村井 うん、ヤバいよね、あれ。あれねえ、そう1日に限られてる、トライできる回数が。

野村 俺もそう。

村井 フリクション系だから、ずっと持ってると感覚が失われてくる。指皮削れて、持ち感がもうホントに……。

野村 最初は止まるんだけど、後半やるとめっちゃ遠く感じる。たぶんV15あると思う。

村井 あれV15あると思うよね。

野村 たぶん登れたらV15って言う、俺はとりあえず。

村井 俺もV15ってコメントするわ、じゃあ。V15だね~つって。

── スイスツアー中に塩原のグレード比較検討みたいなことをやっていましたよね?あれ、ちょっとおもしろいなと思っていました。

村井 やっぱり、そういうのは大事かなと思って。初登時と比べ微妙にホールドの変化があれば、初登時と現状でグレードが乖離しちゃうっていうのは当たり前だし。放っておくと初登のグレードが継承されていくだけなので、そこはちょっと初登者、再登者の話し合いとかで現状に則した適正グレードに変わっていったらいいのかなと。

── 高難度課題だと、それを検証できる人が少ないですし、そういった意味では「僕はこう思います」みたいな発言は出てきていいですよね。その中で擦り合わせしてコンセンサスを得るみたいな。

野村 塩原ルーフ課題のグレード談義のあれは、すごくしっくりきたよね。僕たち二人のなかでは完璧に一致でした。

── 塩原のルーフ課題は、二人とも全部登っていますか?

村井 全部、登っていますね。

村井隆一 instagramアカウント(@ryu_1)より

野村 僕はりゅうさんの「Birth of The Cool(V14)」(村井初登)が残ってる。あれ以外は完登しています。

クライミングシューズは信頼できる相棒

── 2人にとって、アンパラレルのクライミングシューズってどういった存在ですか?

村井 ほとんど相棒みたいな感じですね。背中を預けるじゃないですけど、足は全部預けています。やっぱり、自分にとっては武器を最大限に活かしてくれるものなので、この靴を履いて登れない課題があってもシューズのせいにすることは絶対にないと思いますね。それぐらい信頼を置けるシューズですね。

野村 とにかく課題の印象が変わるというか、(シューズを)変えるとどんなもんかみたいな。すごく大事なんだなって気づきました。チョークとシューズは本当に大事ですよね。最近まで、あまりシューズは気にしてなかったんですけど、アンパラレル履いてから、すごく考えるようになって。相棒っていう表現は、たしかにしっくりきます。

── シューズに求める性能で、一番重要視しているものは何ですか?

村井 自分の登りをさせてくれるシューズですかね。自分のスタイルを一番表現させてくれるシューズ。もう、アンパラレルのシューズを履けて幸せです。一番、やりたいことやらせてくれるシューズだから満足です。

野村 結局、つま先を一番使うので、つま先がしっくりくるシューズから選んだりとか……。選べる環境がまず、すごくありがたいですけど、シューズによって性能が顕著に変わるってことは、研究されてるなって感じがしてすごいと思っています。いつも。

── ありがとうございます。そんなふうに言っていただけると、とてもうれしいですね。「どれを履いても一緒です」って言われたら嫌だなと思って、企画開発しているので。フリクションはどうですか?不満はないですか?

野村 全然ないですね、もうこの2つ(『ヴィム』と『レグルスLV』)で、僕は大満足です。

村井 そうですね。元々、つま先を残すのが得意じゃなかったんですけど、それでもやっぱり足を残せる様になってきたっていうのは、少しムーブの幅が広がってきたかな、という感じはあります。

野村 なんか、アンパラレル履くようになってからフットワークが洗練された気がします。前まで、結構上半身で登るっていう感じだったけど、最近、すごい足から気にするようになったかなって。手堅くなったかもしれない。

村井 僕も前まではとにかく持てるか持てないかを意識してたけど、最近はこう、足の先も信頼して、そっちになるべく重心を置いてっていう登りはできるようになってきたかもしれないですね。

村井隆一 使用シューズ

クライミング

レグルス REGULUS

商品タグ:
¥20,900 (税込)

レグルス

¥19,250 (税込)

剛性とサポート性に優れたオールラウンド・ダウントウシューズ

商品詳細

UPライズVCS

¥18,150 (税込)

エッジングとスメアリング、ヒールフック性能を高次元で両立した2本ベルクロモデル

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野村真一郎 使用シューズ

クライミング

ヴィム VIM

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¥19,900 (税込)

ヴィム

¥17,600 (税込)

強傾斜で抜群のかきこみ力、軽快さと自由度に優れたスリップオン・ダウントウシューズ

商品詳細

レグルスLV

¥19,250 (税込)

剛性とサポート性に優れたオールラウンド・ダウントウシューズ

商品詳細

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