HOME > “現場主義”インプレッション > これからの定番となりえるポテンシャル!
キャラバンの最新作 “ 軽量 ” シューズ「C1_DL MID」と「C1_DL LOW」

今の時代に応えた待望の2024年最新作、キャラバンシューズ/C1_DL MID&C1_DL LOWを徹底レビュー!

これからの定番となりえるポテンシャル!
キャラバンの最新作 “ 軽量 ” シューズ「C1_DL MID」と「C1_DL LOW」

本年6月、創業70周年を迎えるキャラバン。同時に、社名の由来ともいうべき “ キャラバンシューズ ” が誕生してからも70年だ。そのキャラバンシューズの正統的な後継モデルは、日本のトレッキングシューズの代表格である「C1_02S」(C1_02Sのインプレッション記事はこちら)だが、今年はその派生モデルとして新しいラインである【 C1_DL 】が新登場する。これはアッパーデザインによって2タイプあり、ひとつが ミッドカットの「C1_DL MID」で、もうひとつがローカットの「C1_DL LOW」。まさに創業70周年を記念するモデルといえよう。

【 C1_DL 】シリーズの最大の特徴は、登山靴メーカーらしく、かなりシッカリとした作りなのに “ 軽量 ” であること。シューズの軽量化のためにさまざまな工夫が加えられているが、しかし履き心地や機能性もおろそかにはしていないのが大きなポイントである。では、まずは細かな点をチェックしていこう。

アッパーの丈の高さだけではない、2つの【 C1_DL 】の違い

右のグレー色モデルが「C1_DL MID」で、左のブラック色モデルが「C1_DL LOW」である。

名称通り、C1_DL MIDはミッドカットで、C1_DL LOWはローカット。だが、たんにアッパーの丈の長さが違うだけではなく、細かな部分には異なる点も見られる。

改めて、こちらがC1_DL MID。

足首周りがパッドで覆われたミッドカットである。より詳しく各部を説明すると、アッパーがグレー、その下のミッドソールもアッパーと同色のグレーで、底部のブラックがアウトソールだ。そして、赤い部分は後述する「3Dスタビリティパーツ」である。

そして、こちらがC1_DL LOW。ご覧の通り、ローカットだ。

アッパー、ミッドソール、アウトソール、3Dスタビリティパーツとすべてがブラックのためにわかりにくいが、基本的な構造はC1_DL MIDと同様である。

C1_DL MIDとC1_DL LOWの最大の違いであるアッパーの丈を比べてみると、C1_DL LOWは単純にアッパーが低いのではない。両サイドはたしかにローカットらしく低いのだが、アキレス腱側はC1_DL MID並みの高さを残している。別の言い方をすれば、両サイドが深くくぼんでいるようなカットだ。

また、C1_DL MIDには足首周りの外側に張りのあるパッドが加えられ、脱ぎ履きのときに指をかけるテープのつけ方も異なっている。

使いやすさを考えたディテールと、要所への補強

よく見ると、シューレースを通す箇所も仕様も違う。ローカットのC1_DL LOWは一般的なスニーカーのようにシューホールに通すのに対し、ミッドカットのC1_DL MIDはシューホール代わりにテープ状のループに通すのだ。

C1_DL LOWのほうがよりシンプルな構造だといえるだろう。

C1_DL MIDの足首部分はフックがつけられている。

シューレースが薄手の平紐ということもあり、フックにシューレースをかけるとスルッと滑り、簡単に締め付け具合を変えられる。また、フックからシューレースを外しやすく、すばやく脱ぎ履きもできるのもいい。

……と、ここまではC1_DL MIDとC1_DL LOWの違う点だったが、これからは両者に共通するポイントを見ていく。

ミッドカット、ローカットが共有する【 C1_DL 】の機能性

どちらも、つま先は発泡TPU樹脂で補強されている。

C1_DLは全体的にソフトなシューズだが、この樹脂は薄手でもかなり硬いのに驚く。だから、つま先をガードする保護力は十分だ。

タンの正面のシューレースで擦れやすい箇所もTPU樹脂で補強されているが、こちらの樹脂は柔らか。タンのクッション性を妨げていない。

この部分にはループ状のテープが逆U字型につけられている。タンがズレたときに引っ張って位置を直すのに便利な仕様だ。それに洒落ていて、見た目もなかなかいい。

アッパーのメイン素材は、ポリエステル製のメッシュ生地。部分的にTPU樹脂で補強され、擦れによる糸切れの心配を軽減している。なによりも非常に軽くて柔らかく、通気性も上々だ。

この内側にはゴアテックスが使用されており、その透湿性と防水性を妨げず、乾燥も速い。

次にアウトソール。以下の写真のブラック部分だが、一見でシューズ底面に赤い3Dスタビリティパーツが露出していることがわかる。

軽量化を重視したC1_DLは、大胆にもアウトソールの肉抜きを行なっている。一般的なトレッキングシューズのアウトソールはシューズ底面を完全に覆っているものだが、C1_DLは部分的に3Dスタビリティパーツが露出しているというわけだ。重いアウトソールはシューズの重量増の大きな原因となるが、その面積を減らすことで、C1_DLは軽量なシューズを実現している。ちなみに、このアウトソールには同社オリジナルの「キャラバンLITEソール」が採用されている。

そのアウトソールのつま先部分は、アルパインシューズのクライミングゾーンのように平面的になっている。

岩の細かい凹凸をしっかりと捉えられる設計だ。

同様にかかとの部分も凹凸が少なく、平面的なパターン。この部分のアウトソールは少し厚めであり、ミッドソールのクッション性とのコンビネーションで地面からの衝撃を受け止める。

こうしてみると、C1_DLは低山を中心とした柔らかなハイキングモデルだが、ある程度の岩場への対応も考慮したシューズなのである。

インソールやシューレースまで、細かなパーツも充実

C1_DLは、内部に敷かれたインソールも気が利いている。

カップ形状の構造でかかとをサポートするだけではなく、柔らかな素材(グリーン色の部分)と反発力が高い素材(オレンジ色の部分)という2種類のクッション性素材を組み合わせ、衝撃を吸収しながら、心地よい歩行感を生み出してくれるのである。

なお、定番のC1_02S同様に、 C1_DLはMID、LOWともにワイズは「3E」で、足幅が広いといわれる日本人に合いやすい靴型だ。この余裕ある設計はC1_02Sが多大な支持を集める大きな理由でもあるが、一方では足幅が狭めの人には合わない可能性も出てこないわけでもない。

そこでC1_DLには、C1_02Sと同じく “ ハーフインソール ” が付属している。これを通常のインソールに追加してシューズ内に敷けば、足幅が広くはない人でもフィット感が高まるのである。

シューレースは平紐タイプだ。

最近の主流である丸紐タイプは滑りがよいのがひとつの特徴だが、それに対して平紐タイプは緩みにくく、ほどけにくいのが長所である。同社を代表するC1_02Sも平紐タイプで、こんな部分も人気製品の特徴を受け継いでいるのであった。

歩いてみて実感! 「C1_DL MID」の歩行性の高さ

では、ここからは山中での使用感をお伝えしていく。テストには主にミッドカットのC1_DL MIDを使った。

先に述べたように、C1_DLのワイズは幅が広い3E。実際に足を入れてみると、たしかに内部に余裕があることがよくわかる。僕はそれほど足幅が広くないこともあり、シューレースをきつめに締めてフィットさせたが、足幅が広くて普通の登山靴では窮屈だと感じている人にはうれしいゆとりに違いない。

片足約420g(26.0㎝/片足)とあって、歩き心地はさすがに軽やかである。すいすいと気持ちよく、脚が前に出ていく。

定番のC1_02Sは片足約590g(26.0㎝/片足)だから、その差は約170g。一歩一歩進むたびに足にかかる負担はそれだけ軽減され、丸一日の総計では相当なものになるはずである。

シューズの屈曲性も良好だ。柔らかなアッパーや肉抜きされた薄いアウトソールを使っている効果が実感される。蹴り出すときに良く曲がるから、無駄な力を使わずに済ませられる。

左右へ体がブレにくいのは、3Dスタビリティパーツのおかげだろう。このミッドソールに組み合わされたパーツは、土踏まず部分を左右から支えながら足裏をサポートし、シューズが無用に捻じれないようにする機能を持っているのである。

乾いた土の上でのグリップ力も上々だ。

肉抜きされているアウトソールは接地面積が減っているはずだが、それを感じさせないほどラグのひとつひとつが地面の凹凸をとらえ、ほとんどスリップしない。

岩の上でもC1_DLのアウトソールは滑りにくい。

クライミングゾーンのように設計された、つま先とかかとの部分も効果的なようである。

足裏への突き上げ感がなく、岩や石の上でも快調

それどころか、僕がテスト前に少し心配していた “ 問題 ” も生じなかったのには感心した。それはアウトソールが薄いために、岩場や石がゴロゴロしている場所では足裏にその凹凸を覚え、違和感をもたらすのではないか、ということだ。これは軽量に作られたシューズにありがちな問題で、足裏感覚を生かして歩きたい人にはメリットでもあるのだが、やはり不快だと感じる人は多いようである。

だが、C1_DLに使われているキャラバンLITEソールは、厚みを抑えているのに想像以上に張りがある。そのために地面から感じる過度な凹凸感は消え去り、違和感なく歩けたのだ。また、C1_DL MIDは足底の見えない部分に3Dスタビリティパーツを備えて、シューズの安定性と剛性を高めており、その力も寄与しているに違いない。

木の根などで大きな段差ができているような場所は、EVAを使ったミッドソールの衝撃吸収性の高さを感じた。もちろんクッション性を重視した最近のトレイルランニングシューズほどではないが、そもそもC1_DL MIDは軽量性を重視したハイキングシューズだ。それを考えれば、クッション性は十分である。

また、トゥガードもしっかり機能し、木の根や岩に足をぶつけたときの衝撃を大きく緩和してくれた。

フィット感をアップする、いくつもの工夫

数時間歩いてみると、シューズがいっそう足になじんでくる。それと同時に感じたのは、足幅がそれほど広くない僕にはC1_DL MIDが少し緩く、もう少しフィット感を高めたいということ。そこで、付属のハーフインソールをプラスしてみた。

このハーフインソールは厚み3㎜ほどで  “ こんなに薄くて効果があるの? ”  と思うような薄さだ。しかし試してみると、想像以上の効果で、フィット感が高まったことを実感した。ちなみにこのハーフインソールは、シューズ本体と通常のインソールの間に挟み込んで使用する。

こんな感じでシューズを山中で脱ぎ履きしていると、タンにつけられたループがよい働きをすることにも気づく。

大きなループは指がかけやすく、タンのズレを直すのが簡単なのだ。地味ながら便利なディテールである。

ハーフインソールを加え、シューレースの締め付け感を微調整したC1_DL MIDは、僕の足にますます馴染んだ。

足への負担が少なく、軽やかな足どりで快適に行動できるのはすばらしい。たしかにC1_DL MIDは定番のC1_02Sのよさを受け継ぎながら、軽量に設計された新しいモデルなのだと実感した。

ミッドカットとローカット、【 C1_DL 】の履き比べ

さて、ここまではミッドカットのC1_DL MIDを使って履き心地を説明してきたが、ではローカットのC1_DL LOWとは、どんなふうに履き心地が異なるのか?

僕は最後に、左足はC1_DL MIDを履いたままで右足をC1_DL LOWに履き替え、歩行感の違いを確かめた。

すぐにわかるのは、蹴り出したときの感覚の違いであった。

いうまでもなく、ローカットのC1_DL LOWは足首周りに負荷がかからず、前方へ蹴り出しやすい。それに対してミッドカットのC1_DL MIDはアッパーで足首が守られているために、ローカットに比べれば少し抵抗を感じる。つまり「足さばきがしやすいC1_DL LOW」と「足首が守られているC1_DL MID」という方向性の違いだ。

前進するとき以上に差が出たのは、足を横向きに曲げるときである。曲げるというよりは、足をひねって捻挫しそうになった状態といったほうが正しいだろうか。

上の写真はちょっと大げさに曲げたときの状態だ。アッパーのサイドが深くカットされたC1_DL LOWに比べて、アッパーで覆われたC1_DL MIDはあまり曲がらないのがよくわかる。ローカットのC1_DL LOWは重量約390g(26.0㎝/片足)と軽量化をより押し進めているが、安全性の面ではミッドカットのC1_DL MIDほどではないのが現実だ。

下り坂では、ミッドカットとローカットの違いがさらに鮮明だった。

シューズの先端に体重がかかりがちなため、つま先付近の圧迫感が大きく変わるのである。

ミッドカットであれば、シューズ先端にかかる体重がアッパーで覆われた足首へも分散され、シューズ内部での足のズレも少ないために、つま先に大きな圧力はかからない。だが、足首部分がフリーなローカットは、シューズ内で足が先端付近へズレやすく、どうしてもつま先へ負担がかかりやすいのだ。これが靴擦れの原因にもなる。

だから、足先へ負担をかけず、歩きたい人はC1_DL MIDを選んだほうがよい。しかし起伏が少ない場所ならばローカットでもつま先への負担をあまり感じず、より軽快に歩くことができるだろう。しっかりと山を歩きたい人にはミッドカット、森のなかの散策程度ならばローカットが適しているともいえそうだ。

日帰りから小屋泊、低山から中低山と大いに活躍!

こんな2種のC1_DLは軽量で柔らかいがゆえに、重い荷物を背負うテント泊山行にはあまり適してはいないが、日帰りから小屋泊くらいのライトな登山を大得意としている。

また、C1_DLのアウトソールはそれほど険しくはない岩場ならば対応できる力を備えている。だが、ソフトなメッシュアッパーはさすがに岩場では傷みやすい。そんなことも考えると、もっとも適しているのは岩場が長くは続かない森林限界以下の低山~中高山だろう。そう考えれば、2種のC1_DL は日本の大半の山で活躍するはずだ。

C1_DLの足幅が広いゆとりある設計と履き心地は、定評の高いC1_02Sと似ている。これまでにC1_02Sを愛用し、さらに軽やかに歩けるシューズを探している人はぜひ試してもらいたい。だがそれ以上に、C1_DLの履きやすさは、初めて登山靴を履く人にこそ適している。C1_DL は定番のC1_02Sと同じように、今後のスタンダードになっていくのかもしれない。

文・写真=高橋庄太郎

今回レビューした商品

C1_DL MID  ¥17,930 (税込)

カラー/サイズ:
100グレー  3.0~29.0・30.0cm
190ブラック /23.0~29.0・30.0cm
578カーキ  /23.0~29.0・30.0cm
全3色
重量/約420g(26.0cm片足標準)

C1_DL MID 商品詳細へ

C1_DL LOW  ¥16,830 (税込)

カラー/サイズ:
100グレー  /23.0~29.0・30.0cm
190ブラック /23.0~29.0・30.0cm
578カーキ  /23.0~29.0・30.0cm
全3色
重量/約390g(26.0cm片足標準)

C1_DL LOW 商品詳細へ

『軽くて、履きやすくて、歩きやすいこと』。
それが、キャラバンシューズの生まれながらの使命。

キャラバンTOPへ