REPORT -フィールドレポート-

Close up スノーシーン最前線
Avalanche Forecaster
– アバランチフォーキャスター –
横山 巌 & 林 智加子 インタビュー 前編

横山 巌(よこやま いわお)
カナダのスキー場で働いているときにアバランチフォーキャスターという仕事を知り、雪崩業務従事者レベル1を取得。雪を追いかけ日本とニュージーランドを行き来するなかでレベル2を取得、NZのクレーギーバーンでフォーキャスターも務める。群馬県みなかみ町でガイドとして活動したのち、17/18シーズンからアライリゾートでアバランチフォーキャスターを務めている。 RMUサポートガイド

林 智加子(はやし ちかこ)
パトロールになりたくて訪れたニュージーランドで雪崩業務従事者レベル1を取得。日本とNZでパトロールやガイドとして活動。パトロールをやめNZから引き上げたあと、次のステップのためにレベル2を取得。その後10年間、登山&スキーガイドとして活動したのち、19/20シーズンからアライリゾートのアバランチフォーキャスターを務めている。 G3サポートガイド

スキーエリアの安全を守る存在

スキー場の安全管理区域内でバックカントリーのような
オフピステ滑走を楽しめると人気の高いロッテアライリゾート。
滑走エリアの80%が非圧雪ゾーンというアライで
スキーエリアの安全を守っているのがアバランチフォーキャスターだ。
アバランチフォーキャスターとは、どんなものなのか?
その実像を探っていく。

Text: Atushi INOUE
Spaecial Thanks to Lotte Aria Resort

「昨日の夜は上で68cm、膳棚ステーションの降雪板で82cm、昨日の朝から82cmです。今日もこのまま夕方まで雪が続く見込みになっています。そして、風も強い予報になっています。
今日のコースなんですが、大斜面はクローズの見込みで、下方面を開けるのに全力をそそぎます。フォーキャスターチームの動きとしては、最初全員で膳棚に。それから2チームに分かれて、1チームがベアバレーのコントロールをして、そのままマムシのコントロールに向かいます」

2020 年2月6日、午前6時30 分を少しすぎた頃、新潟県・ロッテアライリゾート・ヴィレッジステーションの事務所にアバランチフォーキャスター・林智加子の声が響く。

「膳棚はステータスオープンをめざします。いつもどおり8時15分。それ以外は少しずつ遅れます。今日はマムシエリアも爆薬コントロールをしますので、朝イチは入らないでください。エキサイターに関しては朝イチに入っても大丈夫です。雪が深いので気をつけて。9時半オープン予定にしています。L3リフト(小毛無リフト)も9時半オープン予定にしていますので、六本木ロードも9時半まではクローズにしください」

打ち合わせスペースの中央に立つ林の周りは、パトロールとアバランチフォーキャスターチームの面々が囲む。その数は10〜20人ほど。前日の昼すぎから、この冬一番の寒波が襲来。大荒れの天候になることが予想されるこの日、集まったメンバー全員が真剣な面持ちで林の話に耳を傾け、これからスキー場オープンまでにすべき仕事に気持ちを集中させていた。

毎朝、午前6時30分からヴィレッジステーションの事務所内でミーティングが行なわれる。誰と誰がチームを組み、どの斜面のコントロールを行なうのかなど、その日のフォーキャスターチームの動きが共有される。

気象状況の予測は、ネットで集めた情報を元に行なわれる。日本の気象庁の情報はもちろん、北米やヨーロッパのサイトなど、さまざまな情報を元にアライの気象条件を読み、それが積雪にどんな影響を与えるかを分析していく。

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『アバランチフォーキャスター(AvalancheForecaster)』。日本ではまだ馴染みのない言葉だが、雪崩の安全管理をする業務にあたる者を表わす役職名だ。この分野の先進国であるカナダでは、その活躍の場はスキーエリアに限られず、道路や鉄道、発電所など幅広いシーンにわたる。そのそれぞれの場で、雪の情報を読み、雪崩が起きる可能性を検討、それを低減させて安全性を保つのが、その任務だ。

ロッテアライリゾートは、2017年12月のリニューアルオープンに向け、雪崩リスクマネジメントに関してダイナミックアバランチジャパンと業務契約。滑走エリアの80%が非圧雪のフリーライディングゾーンというスキー場の安全管理を任せてきた。

その立ち上げからフォーキャスターチームの一員として参加し、前出の林をチームに誘った横山巌は、ここでのアバランチフォーキャスターの仕事について次のように話す。

「日本のスキー場は多くの場合、コースがあったらそこしか滑走エリアではありません。ですがアライリゾートの場合、コースはもちろん、コースとコースの間のオフピステも滑走エリアになっています。そのオフピステエリアもきちんと安全管理して、滑走エリアとして開けているところがアライリゾートの大きな特徴です。
そして、それぞれの斜面の雪崩の発生状況や新たな降雪量を踏まえて、どこに、どんな種類の雪崩の可能性があり、それがどのぐらいの刺激で実際に起きるのかを見積もり、雪崩の可能性を低減化する。また、低減化できない場合は、そのエリアへの立ち入りを禁止するなどして安全性を確保する。そうして、各エリアのオープン・クローズを決めていくのが、アライリゾートでのアバランチフォーキャスターの仕事です。
雪や天候の条件は毎日変化しますが、その日その日の条件のなかでお客様ができるだけ楽しめるように、可能な限り早く、広く、安全なエリアを開放することを心がけています」