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つま先まで確保された、程よいフィット感。一般登山にも使えるグランドキングの「GK26」をレビュー。
アプローチシューズとトレッキングシューズの違いなどを踏まえて検証しました。

足さばき軽やかで、岩場に強いアプローチシューズ 。グランドキング『GK26』

登山靴のなかには “ アプローチシューズ ” というカテゴリーがある。もともとはクライマーが “現場(岩壁など)へ、アプローチするときに便利” なシューズとして開発されてきたもので、目的地に到着すればクライミング用のシューズに履き替えるため、ある意味では “本番前” に使うシューズともいえる。

それゆえに、本来は長い距離や時間を歩くことはあまり想定せず、その代わりに軽量で持ち運びにも適したスリムなフォルムが特徴だ。主体はローカットで、登山道ですらない岩場まで移動しやすいように、アッパーやアウトソールは少々硬めである。だが、現在は歩行性も重視され、一般的な登山にも使いやすいタイプが増えている。

アプローチシューズとトレッキングシューズの違いとは?

このようなアプローチシューズは、高山の岩稜帯や残雪の上などのハードな環境に向く“ライトアルパイン系”といわれるシューズと性質がよく似ている。ライトアルパイン系シューズをもう少し軽く、小ぶりな形状で設計されたものだと考えれば、おおむね間違いはないだろう。

一方、トレッキングシューズは柔軟でアウトソールも曲がりやすく、歩きやすさを考えれば、アプローチシューズ以上だ。ミッドソールの弾力性や衝撃吸収性も高く、足腰に負担もかかりにくい。だが、岩の上でも滑りにくいのは硬めのアウトソールをもつアプローチシューズ。アッパーの耐久性も高いのがメリットだ。

つまり、アプローチシューズのアッパーやアウトソールはトレッキングシューズよりもハードな環境に向くが、重量はライトアルパインシューズほどではない。両者の間にあるような立ち位置のシューズともいえ、最近は岩場があるような場所を中心に一般的な登山に使う人も増えている。

つま先まで確保された、程よいフィット感。一般登山にも使える

グランドキングの「GK26」は、そんなアプローチシューズのひとつだ。

アッパーは強靭な1.6㎜のスエードレザーと合成皮革、メッシュポリエステルを使い分け、アウトソールはグリップ性能が極めて高いヴィブラムのメガグリップ仕様。つま先、側面、かかとは頑丈なラバーで覆われている。

シューレース(靴ひも)はシューズの先端近くまで配置されて、つま先までしっかりと締め込むことができ、数ミリのズレさえも起らないようにフィットさせられる。いかにもアプローチシューズらしい設計だ。

急峻な岩場ではシューズと足が完全に一体になっていないと体のバランスを崩しやすく、行動に支障が出てくるものだが、そのあたりをしっかりと考慮しているのである。

シューレースはいくつものハトメを通し、行動中にズレにくいようになっている。フックやアイレットに比べるとフィット感の調整には少し手間がかかるが、いったんきちんと締め込めれば緩みは起こりにくい。

ハトメだけではなく、甲の上には短いパイプ状の金属パーツも使われている。この部分はハトメよりも滑りがよく、甲の上に均一なフィット感をもたらしている。

次の写真は、僕が「GK26」を山中でテストしていた際のものだ。

蹴りだす際に足指の部分が程よく屈曲するように、登り道ではほんの気持ちだけ緩めにシューレースを締めていたが、足がズレやすい下りではしっかりと絞って履きたいと考え、下山開始前に改めて調整したときのカットというわけである。このときもハトメとパイプ状パーツのコンビネーションのおかげで、簡単に程よいフィット感を得ることができた。

ワイズは3E。足幅が広い人でも窮屈ではない

ところで、「GK26」には日本人に多いといわれている “甲高幅広” の足に合わせ、かなり幅が広い3Eのラスト(木型、足型)が使われている。そのために足幅が狭い人はシューレースを最後まで絞り切っても緩く感じたり、調整しきれなかったりする可能性もある。

僕もそれほど足幅が広いわけではなく、じつはここで採用されているラストがもっと幅広のものだったら、おそらく合わなかったと思われる。僕以上に足幅が狭い人は、「GK26」と似たような特徴を持つザンバランのハイクライトGTなども試してみるとよさそうだ。

タンの部分と、かかとにはループが付けられている。ここに指をかければ、脱ぎ履きのときにはラクだ。履かないときはカラビナでまとめておくのにも使える。

そのループがつけられているかかとのアッパーは、少し高い。クッション性のあるパッドが入っていてやわらかく、足に負担を与えずにアキレス腱を守っている。

一方で、アッパーのサイドは深めにくびれている。このために歩行中に足が大きく傾いても違和感はなく、足首も自由に動かせる。

だが、これはアッパーによる左右へのサポート力は期待できないということでもある。ローカットシューズの永遠の課題ともいえる捻挫を恐れる人は、ミッドカットやハイカットのシューズを選んだほうがよいだろう。

ローカットながら硬いシャンクは、ねじれにも強い!

とはいえ、「GK26」はさすが難路に向くアプローチシューズだ。シャンク(足裏でシューズの芯になるインソールボード)が硬く、アウトソールやアッパーも硬質なので、シューズがねじれにくい。

だからローカットでも思いのほか体が安定する。「GK26」は、同様にローカットタイプのトレッキング/ハイキングシューズに比べて体を支える力が強く、怪我をしにくいといえるかもしれない。

もっとも、それはあくまでもローカットシューズ同士で比較したときの話だ。アプローチシューズの特性を理解しないで使用すれば、やはりミッドカットやハイカットのシューズよりも捻挫はしやすいだろう。アプローチシューズをトレッキングシューズ並みに履きこなすには、ある程度の経験が必要かもしれない。

「GK26」のミッドソールにはあまり厚みがない。衝撃吸収性を重視する人には、この点でもトレッキングシューズのほうがよさそうだ。

しかし、ミッドソール(およびアウトソール)の弾力性が高いシューズは地面の凹凸を感じにくく、体を支える力も大きくはない。だが「GK26」は地面や岩の凹凸を感じやすく、硬いシャンクの力もあって不整地でも体を支えやすいメリットを持っている。

アウトソールのサイドにも延びたクライミングゾーン

ここで、改めて「GK26」のアウトソールを確認してみたい。

グリップ力に優れるヴィブラム・メガグリップであることは先に述べた通り。アウトソールのつま先とかかとには、アウトソールを平面的にすることで細かな岩の凹凸を捉えやすくする、いわゆる ”クライミングゾーン“ が設けられている。そして面白いのは、つま先とかかとをつなぐアウトソールサイドの内側部分までもが平面的であること。つまり、土踏まずの前後もクライミングゾーンのように岩場に強い性質を持っているのだ。

以下の写真のように岩の上を歩いていると、アウトソールのサイドの滑りにくさはたしかにありがたい。

アウトソールが柔らかいトレッキングシューズはこの部分の凹凸が少ないこともあり、こういう足の着き方をすると少々滑りやすいが、「GK26」にはそんな心配が少なかった。

つま先のクライミングゾーンが、岩を捉える性能もたしかである。岩の上でのグリップ力が強く、安心感は非常に高い。

状況に応じて、トレッキングシューズとの使い分けも

アプローチシューズとしての「GK26」の実力は、十二分にあると思える。

しかし、アウトソールのブロックパターンの凹凸が深いトレッキングシューズに比べると、「GK26」のアウトソールは土を噛む力があまり高くはない。

足を置くと表面が少し崩れる土の上では、「GK26」の凹凸が浅いブロックパターンは少し滑りやすいのである。

だが、どんな場所でも滑らない完ぺきなアウトソールがあるはずがない。登山道のすべてがやわらかい土や草地ならば、他のトレッキング系のシューズに分があるかもしれないが、岩場が連続するような場所でこそ「GK26」の実力は発揮される。岩場がない山ではトレッキングシューズを履き、岩場がある山では「GK26」を使う……などという使い分けができれば理想的だ。

落ち葉が積もっていたり、地面が露出していたりする場所を「GK26」で歩く場合は、意識的に木の根や地面に埋もれた岩などにアウトソールをかけながら歩くといい。まあ、それはどんなシューズで歩くときにもいえることだが。

僕は昨年の秋からこの「GK26」で何度も山に登っている。

厚みのあるスエードレザーのような素材は、使いこむほどに履き心地がよくなっていく。履くたびにアッパーが柔らかくなり、ますます足にフィットするようになっているのがうれしい。岩が多い山ではアッパーが傷みがちだが、その点も問題はなさそうだ。

しかし、岩の上で使っているとアウトソールは次第に摩耗していく。僕がテストに使い続けていた「GK26」のアウトソールにもかなり擦れが見られるようになってきたが、このモデルもアウトソールの張替えが可能だ。近年はアウトソールの張替えができないシューズが多くなっているが、さすがは日本国内の登山靴メーカーだけあってアフターケアがしっかりしているのである。

ますます足へなじんできたアッパーとともに、きっと愛着は高まっていく。「GK26」は今後ますます長く愛用できる一足になるかもしれない。

文・写真=高橋庄太郎

今回レビューした商品

GK26 ¥21,450 (税込)

109チタニウム/443キャメル 全2色
23.0-28.5cm

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