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第2回目は、山登りの次なるステップアップを目指す登山愛好家が求め続けた、キャラバンシューズのDNAを受け継いだ高機能登山靴GRANDKING『GK85』を徹底レポート!

理想的な足型で、すばらしいフィット感『GK85』

シューズ選びでいちばん大事なことは、「自分の足に合っているかどうか」である。自分の足に適切にフィットしているということは、そのシューズを作っているメーカー/ブランドがどこであるかということや、それがどのような設計でどのような機能を有しているかということ以上に、非常に重要なことなのだ。

その点、今回テストしたグランドキングの「GK85」は、僕にとってまさに理想的な登山靴であった。フィット感が申し分なく、つま先や甲、足裏まで、どこにも一切違和感がない。とくに、かかとの収まりとホールド感はすばらしく、もっと早くに出会っていればよかったと思ったほどだ。

実際に足を入れ、つま先に体重をかけて、かかとを上げてみるとよくわかる。いくぶんのズレもなく、ヒールカップへかかとがきれいに収まったまま、足とシューズが一体化しているのが実感できるのだ。これならば歩行が安定するだけでなく、靴擦れも起こらないだろう。

クラシックな外観と、頑丈な構造

この『GK85』は、グランドキングのラインナップのなかでは“最上位”に位置するものだ。このときの“最上位”という意味は、同社のなかでもっとも頑強で、ハードな使用にも耐えうるものということである。前回紹介したキャラバンシューズ『C1_02S』が柔軟性のある歩きやすい登山靴だとしたら、このグランドキング『GK85』はより本格的に山をガッツリ登るための登山靴と言えるだろう。

アッパーには2.0mmという厚みのある上質なヌバックレザーを全面的に使い、足首をしっかりと守るハイカットの構造。つま先も硬いラバーで覆われている。全体的に頑強な作りだ。片足で約705gとあまり軽いシューズではないが、この強度を実現するには必要な重さだと考えたほうがいい。

上から見ると、足指の付け根付近に余裕を持たせ、丸みを帯びた設計であることがわかる。それに対し、つま先やかかとはボリュームを抑えている。

日本人の足の形状を細かい部分まで考えているようで、それが僕の足にもちょうど合っていたというわけである。

柔らかめで屈曲性もいいアウトソール

この『GK85』には、グリップ力に定評のあるヴィブラムソール(TSAVOソール)を採用している。
(以下、ソールと表記)

ソールの凹凸は比較的深い。

そして、地面に触れるそれぞれの「凸」の部分の間は広めだ。

これならば泥や土が「凹」の部分にこびりついたとしても、歩行しているうちにすぐに落ちていくはずである。

そんなソールの成形ラバー硬度は、いかにも頑丈そうなGK85の印象のわりには柔らかめだ。

ソールの屈曲性が高いので前方へ蹴り出しやすく、クッション性の向上にも一役かっているようである。

柔らかめのソールだが、ソールのエッジは崩れかけた斜面へ充分に食い込む力を持っている。

このような崩れかけた斜面でもなんとか体を止めることができ、安全性を高めるのに役立っている。

もちろん地面の状態によってはどうにもならない場合もあるが、一般的な登山の際には充分であろう。

先ほどのソールの写真を改めて見ていただければわかるように、ソールの中央付近に比べると、つま先とかかとの辺りは「凸」部の面積が広い。これは岩の上の細かな突起をとらえやすいようにと配慮されているからだ。

『GK85』のソールは岩肌へのくい付きもよく、岩の上でも具合はいい。よほど急峻な岩場でなければ、支障なく歩けるはずだ。

木を使った階段や木道のような場所でもグリップ性は上々である。

このようにソールだけを見ても、さまざまな地面に対応できるように工夫しているのがよくわかる。『GK85』は、汎用性が高い一足なのである。

つま先のラバーで安全性をアップ

ソールに比べると、つま先を覆うラバー部分は比較的硬い。
それは靴内部に硬質材で成形されたカップカバーが内蔵されているからだ。

よほど尖った岩にぶつかりでもしない限り、つま先が痛くなるようなことはない。

崩れかけた地面に蹴りこんでも衝撃は充分に緩和され、怪我を防止する効果も非常に高い。

無雪期はもちろん、春先に残雪の上を歩くくらいなら、これだけの強度があれば充分だ。ただし、つま先がわりと丸いので、わずかな凹凸をとらえなければ行動しにくい急峻な岩壁では、よりアルパイン向けのシューズのほうがいい。

レザー素材ゆえの蒸れと透湿性の関係

タンに使われているレザーのマチ部分には余裕を持たせてあり、靴紐を緩めると広く開口する。

一般的な登山靴以上に足入れしやすく、好印象だ。

タンと同様に足首周りには柔らかなレザーが使用され、足首を優しく包み込んでくれた。これにより『GK85』は足首まわりまでフィット感が高まっている。

また、ライナーの下にはゴアテックスのメンブレンがあり、防水性も確保されている。

靴紐を締めるためのパーツは、いくつかの種類を組み合わせている。

つま先付近は軽い力で一気に締められるD環やアイレットで、足首の屈曲部分のひとつ手前には靴紐をかけるだけでしっかり固定できるフックが使用されている。

しかし屈曲部自体には靴紐の滑りがよいコードが採用され、そこから足首までは再びフック。だが、この部分のフックの固定力は抑えられており、靴紐を引けばフィット感の微調整がしやすい。細かな形状まで見れば、じつに5種類のパーツが使われており、靴紐によるフィット感の調整がいかに大切であるかということを熟知している登山靴メーカーの姿勢が伝わってくる。実際、足へのなじみはじつによく、かかとの収まりがよいヒールカップと連動して、すばらしいフィット感をもたらしてくれた。

今回テストを行なったのは8月で、陽射しが強い日向にいると何もしなくても汗ばんでくるほどの好天だった。『GK85』はオールレザーのシューズとあって、ナイロンなどの化繊素材をアッパーに使ったタイプに比べれば透湿性が少し落ちるのは否めず、真夏はシューズ内部に蒸れを感じなくもない。

ただし、これはすべてのレザーシューズに当てはまることだ。とくにフィット感が高いタイプは内部の空気が抜けにくいこともあり、化繊素材ほどはゴアテックスの透湿性を生かし切れない。真夏以外はそれほど蒸れないと思われるが、耐久性よりも蒸れの少なさを重視する人は、透湿性を生かせる化繊素材タイプがよいだろう。
同ブランドでいえば『GK83_02』がそれである。

2種のミッドソールが生み出す効果

ミッドソールには、硬度が異なる2種類のEVAが用いられている。

濃いグレーの部分は硬めで、その上の薄いグレーは柔らかめだ。

つまり、濃いグレーのミッドソールで体重を支えつつ、薄いグレーのミッドソールで衝撃を吸収し、相乗効果でシューズの機能性を高めているのである。
さらに特筆すべきは、知る人ぞ知るキャラバンシューズのテクノロジー『インソールクッションシステム』なる存在が挙げられる。(詳細ページはこちら

今回は朝から夕方まで山中を歩き回ったが、最後までかかとや足裏に疲れや違和感が生じなかった。このミッドソール構造やインソールクッションシステム効果も一因と思われる。

「自分の足に合う」シューズのよさ

ところで、登山靴というものは、実際に山中で使う前に履きならしをしたほうがいい。とくにレザータイプの登山靴はアッパーが柔らかくなじみ、無用なトラブルが生じにくくなる。

だが今回、僕は『GK85』をいきなり山中で試してしまった。しかし歩行中、どこかがズレて靴擦れになるようなことはなく、足に違和感を覚えることもなかった。それは『GK85』の足型が僕の足へ絶妙に合っていたからである。こういう一足を見つけられれば、それだけで山はガゼン歩きやすくなり、疲労も緩和できるのである。

僕の足に合っていたからといって、他の人すべての足にも優れたものであるとは限らない。むしろ『GK85』が合わず、山中でひどく苦労するかもしれない。だが、このモデルが日本人の足型を考えて設計されている以上、僕のようにぴったりとフィットし、深い満足感を覚える可能性をもつ人は多いのではないだろうか? 機会があれば実際に足を入れてみて、その履き心地をぜひ試していただきたい。

文・写真=高橋庄太郎

今回レビューした商品

GK85 ¥30,800 (税込)

カラー:440ブラウン/22.5-29.0・30.0㎝
    670ネイビー/22.5-29.0・30.0㎝

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